夏のおもひで |
山の麓のさびしい村に
水引草に風が立ち
草ひばりのうたひやまない
しづまりかへった午(ひる)さがりの林道を …
夏になると、昔が帰ってくる。
昔々であるが、子供の頃の私は、母の故郷によく帰っていた。
そこで、風通しの良い広い座敷で昼寝などをしてボーとしていると、立原道造の詩がやってきて、現実感の乏しいロマンチズムに酔っていたものです。
それらの一つが上の詩です。
日本の四季は、いいものです。
夏に限らず季節毎の思い出を必ず連れ帰ってくれ、現在を豊かにしてくれます。
思い出の数々が、人生の意味、深さをくれますし、少しばかりの後悔まで。
ひょっとしたら水引草があるかと、自然体験観察園に行くと、どうも見当らない。残念。
植物を見分ける目が育ってくると、身の危険にも敏感になります。
この間、道路の端に牧場からの脱走兵ならぬ、脱走草を見つけました。カモガヤです。
これは危険です。花粉アレルギーの人にとって、要注意です。
かれら(彼女らも含め)が牧場にいたら、牛さんも牧場主も喜ぶパートナーです。
かれらが牧場にいれば、牛さんに食べられてもすぐに再生してきます。
なぜなら生長点が株元にあり、先から食べられても食べられても再生できる構造なんです。
その上、葉は食べにくいよう、かたい繊維質を発達させています。
しかしそこは牛さんも負けずに、四つの胃で対抗しているのです。
そこでカモガヤさんは、牧場に飽きたのか脱走して、都会の道端に出てきたのです。
もともとイネ科の植物は、草食動物に対抗して進化してきたのです。
つまり都会は、天敵の牛さんもいないから大成功です。
その上、アスファルトや建物で土が少ないので、生存の為に沢山の花粉をまきちらかすのです。これが困りものなんです。
私のように花粉、特に杉、檜、カモガヤに敏感な人間にとって、最悪です。
しかし彼女(かれ)の身になれば、それぞれが持場でしっかり暮らせる風土が必要なんだと思います。
カモガヤさんには、牧場に帰って欲しい。
日本の牧場主さんが、しっかり牧場経営できる環境も、私たち一人ひとりがどう考え、どう行動するかにかかっているのでしょう。
嗚呼(ああ)地球環境です!
追憶は、アナログ的に、対策は、デジタル的に決めてみました。
いやどうも…アナログ的ですかね。
井上 健雄