フィランスロピー研究所 今月のありがとう
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2014年1月のありがとう
イメージ画像 シックスシグマからデザインへ

 今年のダボス会議※1は、日本から安倍首相が参加し話題を深め、Japan is Back.と国際社会の中でプレゼンスを高めた。
 ダボス会議の年度テーマから、世界の課題が透けて見える。

2014年 世界の再編成−社会・政治・ビジネス−
貧富の差の拡大・若年層の失業・不穏な反政府勢力…
2013年 弾力性ある活力
衰えが見え始めた資本主義を新しい枠組みから再活性を目指す
2012年 時代遅れの資本主義
いまのままで資本主義を突き進むと、社会は不均衡を拡大させる

 ここ3年来、表札を変えても同じ問題を議論しているように見える。
 もっともっとブレークダウンしないことには、解決に繋がらない。
 私は2006年、「創造的であれ」というテーマのもとに、副題として中国・インドの台頭としたものがブレークダウン例と考える。
 つまり中国・インドの台頭により、知識・技術がコモディティ化して、先進国は創造的なデザイン戦略なしには勝てないというシンプルなものである。

※1 世界経済フォーラムは1971年、スイスの経済学者クラウス・シュワブ氏によって創設されたNPOである。スイスのダボスで開催されるので 、ダボス会議とも言う。

 丁度この頃(2006年前後)、アメリカの巨大会社もダボス会議のテーマに連動してデザイン戦略を本格化させている。

1.GE The Next Big Bussiness : Cleaning Up the World
時のCEOジェフリー・R・イメルトは、環境ビジネスこそ利益のもとと、エコマジネーションという造語を創り、汚染された地球を掃除する装置を新たに開発して いくことを宣言した。
前任者ウェルチの生産性向上と効率改善によるシックスシグマに対し、リーン・シックスシグマという方法でデザイン戦略を取り入れ、イノベーションとイマジ ネーションを強化する方向に舵を切ったのである。
こうした結果、GEは二ケタ成長を続け、利益額は前任のウェルチ会長を超えている。

2.P&G
2001年CEOに就任したA・G・ラフリィは、会社の戦略立案にあたってデザインを重視し、クロウディア・コチャカ副社長を新設デザイン部署の責任者とした。
そして成功例として、モップ「スウィッファー」を誕生させている。従来のモップは拭いて、また水で洗って、またそのホコリを床になすりつけているのに対し 、このスウィッファーは静電気でホコリを吸着させるものである。
1999年に発売し、2006年に75億$の売上、拭き掃除マーケットのシェアも75%と驚異的な成果を残している。
消費者の欲求にあったデザインは、多大なる支持を獲得できるということだ。

 日常から商品を見直しイノベーション※2を生み出し、成功している。
 これらの取り組みは、4つのステップで展開されている。

(1)観察 現場・現物・現実をしっかり観察
(2)仮説 観察結果からのいくつものアイデア、そしていくつものプロトタイプをつくる
(3)デザイン 仮説から何を残し、何をカットし、新しい何かを加える
(4)市場検証 商品やサービスを市場に出して、その反応をフィードバックさせる

※2 ここでいうイノベーションは、クレイトン・クリステンセンのいうマクロレベルを指すのでなく、ミクロレベルのものをいう。

 私たちも効率や生産性を競うより、方針をブレークダウンし、解決策を適確にデザインすることによりアドバンテージを築いていくべきである。

井上 健雄

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