イングヴァル・カンプラード(2) |
狼少年のように、4月からカンプラードについて「語る」としていた。
6月のありがとうまで語らなかったので、「騙った」とされているかも知れない。
さぁ始めよう、カンプラード物語を、彼へのリスペクトと共に。
彼は1926年3月20日、スウェーデンのスモーランド生まれで、アグナリッドのエルムタリッド農場で育った、今88才。
2007年、億万長者ランキング世界7位、3兆円超の資産家である。
こうした記述をすれば、彼がイケア(1943年)の創業者と分るでしょう。
イケア(IKEA)、Iはイングヴァル、Kはカンプラード、Eはエルムタリッド、Aはアグナリッドと、自分のイニシャルと出生地を合わせて企業名としたのである。
彼が参入しようとする通販業界は、業者の乱立、価格競争の激化、品質の低下と苦情が増大していた。
そこで彼は、ショールームを作り、そこで商品を見て買って貰う戦略を立てたのである。
25才の時、1953年、1Fを展示場とし、2Fに無料のコーヒーとパンを用意した。
1955年、50万部のカタログを発行し、600万クローナの売上をあげたのである。
イケアは、どこよりも安い戦略を取り、業界全体を敵にまわすことになった。
意地悪を多々された。
しかし彼は負けず、業界が支払サイト3、4か月後に対し10日以内に支払うとか、小さな製造業者に性能の良い機械(中古品)の提供や、スタッフを送り込み生産性と品質を向上させたのである。
業界のイヤガラセという問題を、素晴らしいチャンスに変えたのである。
遅れていた共産圏の業者への発注や、ドア業者にベッドのヘッドボードを作らせたり、ワイヤーフレームのソファとテーブルはショッピングカートのメーカーに作らせたり、パーティクルボードを薄い無垢材で挟みこんだ安いボードオンフレーム家具とするなど、いろいろな新発想により、家具業界を刷新したのである。
もちろん配送コスト対策の為に、フラットパックを活用し、お客自身の持ち帰りも容易にし、大幅なコスト削減を実現している。
こうした各種の取り組みにより、イケアは平均して年2〜3%商品価格を下げるのに成功している。
この大成功者にして、飛行機はエコノミー、リムジンは使わずバスで移動し、会社の健康を損ねないようにしている。
彼の目標としたものを、次の言葉でしっかり理解して欲しい。
「私たちは明確なコンセプトがある。
それはすぐれたデザインと機能性を兼ねそなえたホームファニシング製品(家を快適にするために必要なもののすべて)を幅広く取りそろえ、より多くの人が買えるよう、できる限り手頃な価格で提供し、『より快適な毎日をより多くの人に』という目標を実現する」
こうしてカンプラードを語れば、もう一人思い浮かぶ人がいる。
ウォルマートの創業者サム・ウォルトンである。
少し乱暴だが、二人の共通点は田舎暮らし、経済的余裕のない客を喜ばせる、ローコスト小売業の追求である。
そして最も重要な共通点は、お客から利益を奪うのでなく、商品の価値を高め、お客に利益還元し、結果として売上・利益を創造していったのである。
困難な時期にあっても、今、カンプラードやウォルトンがいれば、新しいマーケットを開くであろうことは明白である。
智慧ある人々よ!
世のために積極的に打って出ようではないか!
井上 健雄