スモールデータのアーティストとして |
ビッグデータを駆使し、予測する時代である。
フランス パリで2005年、設立されたネット広告企業クリテオがある。
2013年630億円(3年間で売上6.7倍)。
ユーザーの行動を先回りして情報を提供する能力で、売上を伸ばしている。
また米国の気象データ活用企業クライメート・コーポレーションがある。
ここは米国で公開されている気象データ、過去60年間の収穫量実績データ、地形データなど膨大なデータを利用して、天候による被害発生確率を予測して、請求がなくても保険金を支払う仕組み等を持っている。
モンサント(米化学メーカー)が950億円で買収している。
モンサントは遺伝子組み換えで収穫量をコントロールして利益をあげている。
ここに気象情報を取り込み、農作物育成支援サービスに乗りだそうと考えている。
サービス名は「PLANTING ADVISOR」。
これを利用すると、米国の平均的な農家は1万ドル以上の利益が増えるそうである。
つまり最適な種まきの日を予測し、推奨したりするものである。
日本でも、回転寿司のあきんどスシローの店舗システムは、顧客の食欲を予測し流すべきネタを指示するまでになっている。
こうした予測は、店長やマネジャーがしていたものをコンピューターに委ねるものである。
スシローの客待ち時間は土日ともなると1時間以上を超えており、売上を上げるには店舗数を増やすことになる。
現在(H25/9)362店舗で、4年前より30%以上店を増やしている。
平均して各年度23店舗を増設している。
これでは、店舗・マネジャーの育成が出店速度についていっていない状態にあり、コンピューター予測で店舗オペレーションを支援する仕組みが必要となっている。
この予測システムは、顧客が入力した大人・子供の数を基に、1分後・15分後の食欲のロジック組み立てをしており、喫食パワーを大・中・小に分けて提供量を判定する。
この予測に従って、仕入ネタの解凍などを判断する。
最初は中トロやサーモンを流すようになっており、マグロなら350m回ると自動廃棄するとかまでシステム化されている。
スシローは2012年から、年間10億皿の販売データをビッグデータとして分析、予測している。
結果的に廃棄を1/4に激減させている。
これは、108円/皿の原価率を50%としており、他社の原価率40%に比べ素材を重視している。原価なら54円対43円と、11円以上スシローが高い。
そこで廃棄を削減し、売上を上げる予測システムを構築したのである。
こういう10億皿とかの単位になると、ビッグデータとなる。
しかし私たちは違う。
質的に高い情報を対象としている。
私たちはもっと少ないデータ、希少な発言、断片情報…から予測し行動せねばならない。
もっと言えば、社会の、行政府の、企業の、それぞれの課題を、戦略を、想像し、それらをソリューションする仕組みを創造し、リコメンドし、説得できる能力が必要なのである。
こうした解の為に社会を良く知り、情報センスを磨き、日本の、地域社会の、個別企業の、問題を知らねばならない。
私たちとしては、ビッグデータよりスモールデータからソリューションを生みだすアーティストになるべきだと考える。
井上 健雄