修羅場力 |
東日本大震災ほど、各界の大局観とリーダーシップが問われたことは少ない。
各企業のリーダーは、大震災のわずか数分後に対策本部を組織し、社長が本部長に納まっているところもあれば、数日後に副社長が担当したりと、様々である。
いかに少ない情報の中で、適確な指示を下せるかは、リーダーの修羅場力にある。
今日、多店舗展開している企業のリーダーほど、素早く、矢継ぎ早に意思決定を下している。
例えば、マクドナルドの原田泳幸CEOは、重要度をP−ピープル−(人々の安全)、次にS−ソサエティ−(地域社会責任状況)、そしてB−ビジネス−(ビジネスの取り組み)とし、それぞれ赤(危険)、黄(注意)、緑(安全)という基準を出し、リスク対応をしている。
ローソンの新浪剛史社長は、地震の5分後に緊急対策本部を立ち上げている。サプライチェーンの崩壊の中で、コストをいくらかけても良いからと、被災地の支援と事業の復旧の両方に取り組んでいる。例えば物流が滞る中で、氏、自身3月27日、おにぎりを持って宮城県山元町の店舗を訪れている。組織対応でも、地域支社長に全権を委ねる分権経営がローソンのお店の復活を早め、地域貢献を果たしている。
古くは、関東大震災後の復興を担った帝都復興院総裁後藤新平は、新しい住居の形として、同潤会青山アパート等を創った。日本初の海水浴を開くなど、「大風呂敷」とあだ名されたが、このような大構想家がいま必要なのである。
こうしたリーダーに比べ、東電とか日本国首相のリーダー力は乏しい。
菅首相などは、災害対策に力の90%を使うとしている。
いいのだろうか。これは担当を決め、そこに権限を集める意思決定をすればよい。
首相のステークホルダーは、日本全国民から、グローバル社会まで多岐に亘る。
TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加から社会保障制度改革、法人税改革等々、復興に直接関係ない業務まで止めて、国家再建を一層遅らすことになっている。
また東電、経産省(原子力安全・保安院)から原子力安全委員会までが「想定外」を繰り返すのは、クライシスを見据えたリスクマネジメントが不在であったからである。つまり何ら経営が関与していなかった怠慢と言われても仕方がない。
平和呆けし、官僚化した体質転換なしには、同じ轍を踏むことになろう。
今、乱世の時代である。大局観そして修羅場力である。
出でよ!辺境で頑張るリーダーたちよ!
新構想力で新時代を創ろうではないか!
井上 健雄